「リースバックは地獄なのか」という記事を読んで。リースバックを扱う不動産会社として思うこと

先日、リースバックに関する非常に重い内容の記事を読みました。

定年退職を迎え、退職金もあり、住宅ローンも完済していた方が、老後資金への不安をきっかけに自宅をリースバックで売却し、その後の家賃負担や契約内容に苦しむことになった、という内容です。

記事の中では、強引な訪問営業、相場より低い売却価格、契約後の家賃負担、そして「住み続けられる」と思っていたはずの自宅が、精神的にはもはや安心できる場所ではなくなってしまった様子が描かれていました。

リースバックを取り扱う不動産会社として、この記事を読んでまず感じたのは、正直なところ「他人事ではない」ということです。

リースバックは、正しく使えば役に立つ仕組みです。

しかし、売る側の説明不足、契約を急がせる営業、利用者側の理解不足が重なると、住み慣れた家を守るはずの制度が、逆に生活を苦しめる契約になってしまうことがあります。

今回の記事は、リースバックそのものを否定する内容として読むのではなく、リースバック業界全体が反省すべき内容として受け止めるべきだと感じました。

「住み続けられる」という言葉は、便利ですが危険でもあります

リースバックの営業現場では、よく「売却してもそのまま住み続けられます」という説明が使われます。

この言葉自体は間違いではありません。

リースバックは、自宅を売却したあと、買主と賃貸借契約を結び、家賃を支払いながら住み続ける仕組みだからです。

ただし、この言葉だけを強調すると、非常に危険です。

なぜなら、リースバック後の自宅は、法律上も実務上も「自分の所有物」ではなくなるからです。所有者ではなく、賃借人になります。

つまり、

・家賃を支払う必要がある

・契約期間がある

・更新条件がある

・家賃改定の可能性がある

・退去時の取り決めがある

・買戻しにも条件がある

この現実を十分に理解しないまま、「今まで通り住めます」とだけ受け取ってしまうと、契約後に大きなギャップが生まれます。

今回の記事で最も重く感じたのは、この部分です。

その方にとって自宅は、単なる不動産ではなかったはずです。

長年働き、家族と暮らし、住宅ローンを払い終えた場所です。

その家が、契約後には「家賃を払えなければ住めない場所」に変わってしまう。

この心理的な変化を、業者側がどこまで説明できていたのか。

ここが非常に重要だと思います。

リースバックの価格が一般売却より安くなること自体は、必ずしもおかしくありません

記事の中では、売却価格が市場相場より低かったという点も問題として触れられていました。

ここについては、不動産会社として冷静に整理する必要があります。

リースバックの買取価格は、通常の一般売却価格より低くなることが多いです。

これは、単純に業者が安く買いたたいているという話だけではありません。

リースバックでは、買主は購入後すぐに自由に売却できません。

売主様がそのまま住み続けるため、退去時期が読めません。

建物が古くなれば修繕費もかかります。

固定資産税や火災保険料などの保有コストも発生します。

退去後に再販売する場合は、リフォーム費用、解体費用、販売経費、値下げリスクもあります。

そのため、一般のエンドユーザーが空き家を購入する価格と、リースバックとして居住継続を前提に業者が購入する価格は、同じにはなりません。

ここは正直に伝えるべきです。

ただし、問題は「安くなること」ではありません。

問題は、なぜその金額になるのかを説明せず、売主様が納得しないまま契約してしまうことです。

リースバックの査定では、

・一般売却ならいくら程度か

・業者買取ならいくら程度か

・リースバックならなぜこの価格になるのか

・家賃とのバランスはどうか

・退去後の出口価格はどう見ているのか

このあたりをきちんと説明する必要があります。

「今ならこの金額です」

「早く決めないと条件が変わります」

このような営業だけで契約を進めるべきではありません。

家賃は「払える金額」ではなく「払い続けられる金額」で考えるべきです

今回の記事で特に印象に残ったのは、契約後の家賃負担によって生活が苦しくなったという点です。

リースバックでは、売却代金を受け取った瞬間だけを見ると、手元資金が増えたように感じます。

しかし、その後は毎月家賃が発生します。

ここで大事なのは、「今月払えるか」ではありません。

・3年後も払えるか

・5年後も払えるか

・年金収入だけになっても払えるか

・医療費や介護費が増えても払えるか

・配偶者が亡くなったあとも維持できるか

ここまで考える必要があります。

リースバックの相談では、「できるだけ高く買ってほしい」という希望が出ることが多いです。

当然です。

売主様からすれば、大切な自宅を売却するわけですから、少しでも高く売りたいと思うのは自然です。

しかし、買取価格を高くすれば、その分、家賃も高くなる傾向があります。

高く売れたけれど、家賃が重すぎて数年後に退去せざるを得ない。

これでは、本来の目的を失っています。

リースバックで本当に大切なのは、最高値で売ることではなく、生活が破綻しない条件を作ることです。

弊社でも、査定時に「この家賃は少し重いと思います」とお伝えすることがあります。

お客様からすれば、もっと高く買ってほしいという気持ちがあるかもしれません。

しかし、家賃負担が大きすぎる条件は、結果的にお客様を苦しめる可能性があります。

リースバックは、売買契約であると同時に、その後の生活設計でもあります。

ここを忘れてはいけないと、今回の記事を読んで改めて感じました。

強引な訪問営業とリースバックは相性が悪い

今回の記事で最も問題だと感じたのは、強引な勧誘の部分です。

リースバックは、お客様にとって非常に大きな決断です。

不動産を売却するだけではありません。

自宅の所有権を手放す決断です。

老後の住まい方を変える決断です。

家族や相続にも関わる決断です。

そのような契約を、訪問営業で不安をあおりながら進めるべきではありません。

もちろん、すべての訪問営業が悪いというわけではありません。

しかし、リースバックのように高齢者の生活基盤に直結する契約では、特に慎重であるべきです。

「今後、医療費がかかります」

「老後資金が足りなくなるかもしれません」

「今のうちに現金化した方がいいです」

こうした言葉は、事実を含んでいる場合もあります。

しかし、使い方を間違えると、不安を利用した営業になります。

本来、不動産会社がすべきことは、不安をあおることではありません。

選択肢を整理することです。

・一般売却

・リースバック

・住み替え

・親族間売買

・任意売却

・不動産担保ローン

・相続対策

それぞれのメリットとデメリットを説明し、その方にとって何が一番良いかを一緒に考えることです。

リースバックありきで話を進める会社には、注意が必要だと思います。

リースバックが向いている人、向いていない人

今回の記事を読んで、「リースバックはやめた方がいい」と感じた方もいるかもしれません。

しかし、実務上はリースバックが有効なケースもあります。

例えば、住宅ローンの返済が厳しく、このままでは競売や任意売却になる可能性がある場合。

一時的に資金が必要だが、子どもの学校や仕事の関係で今すぐ引っ越せない場合。

相続人が遠方にいて、将来的な不動産整理を早めに進めたい場合。

事業資金や税金の支払いのために現金化が必要だが、生活拠点は変えたくない場合。

このようなケースでは、リースバックが現実的な選択肢になることがあります。

一方で、向いていないケースもあります。

退職金や預貯金が十分にある。

住宅ローンも完済している。

今すぐ大きな資金需要がない。

家賃を長期間支払うことに不安がある。

家族が売却に反対している。

買戻しの見込みがほとんどないのに、買戻し前提で考えている。

このような場合は、リースバックを急ぐ必要はないかもしれません。

特に、住宅ローンがなく、退職金もあり、生活が成り立っている方であれば、まずは本当に売却が必要なのかを冷静に考えるべきです。

今回の記事のケースでも、もし契約前に第三者へ相談していれば、別の選択肢があったのではないかと感じます。

「買戻しできます」という言葉も慎重に見るべきです

リースバックでは、「将来買戻しできます」と説明されることがあります。

これも、よく注意しなければならない言葉です。

買戻しができるかどうかは、気持ちだけでは決まりません。

・買戻し価格

・買戻し可能期間

・住宅ローンが使えるか

・年齢や収入

・家族の協力

・契約書上の取り決め

これらが現実的でなければ、買戻しは難しくなります。

例えば、売却価格が2,000万円で、買戻し価格が2,600万円になる契約だったとします。

この差額には、業者の取得費用、保有コスト、利益、再販売リスクなどが含まれます。

買戻し価格が売却価格より高くなること自体は珍しくありません。

しかし、その金額を将来本当に用意できるのか。

住宅ローンが組める年齢なのか。

年金収入で審査が通るのか。

ここまで考えずに「いずれ買い戻せばいい」と思って契約すると、後で苦しくなります。

買戻しは、希望ではなく計画で考える必要があります。

ヤマトハウステックとしての考え方

今回の記事を読んで、弊社として改めて大切にしたいと思ったことがあります。

それは、リースバックを「売る」のではなく、「判断材料を提供する」ことです。

弊社では、リースバックのご相談をいただいた際、必ずしもリースバックをおすすめするわけではありません。

一般売却の方が良い場合もあります。

仲介で時間をかけて売却した方が高く売れる場合もあります。

親族に相談した方が良い場合もあります。

そもそも今は売却しない方が良い場合もあります。

不動産会社として利益を考えれば、契約していただく方が良いのかもしれません。

しかし、お客様の生活を考えれば、契約しない方が良いケースもあります。

この判断を正直に伝えることが、リースバックを扱う会社の責任だと思います。

また、査定価格についても、単に「いくらで買います」では不十分です。

なぜその金額なのか。

・一般売却と比べてどうなのか

・家賃はいくらになるのか

・退去後の出口をどう見ているのか

・買戻し価格はいくらなのか

・途中解約はできるのか

・契約期間満了後はどうなるのか

このあたりを、できるだけ分かりやすく説明する必要があります。

リースバックは、契約した瞬間に終わるサービスではありません。

契約後の暮らしが始まってからが、本当の意味でのスタートです。

契約前に必ず確認してほしいこと

リースバックを検討している方には、契約前に次の点を必ず確認していただきたいです。

まず、売却価格が妥当かどうか。

一般売却した場合の価格と、リースバックの価格を分けて確認してください。

次に、家賃が無理なく払えるかどうか。

今の収入だけでなく、将来の年金収入、医療費、介護費、配偶者の状況まで考えてください。

そして、契約期間と更新条件。

普通借家契約なのか、定期借家契約なのかで、将来の安心感は大きく変わります。

さらに、家賃改定の条件。

どのような場合に家賃が変わるのか。

一方的に変更されるのか。

協議が必要なのか。

契約書を確認する必要があります。

買戻しを希望する場合は、買戻し価格と期限を必ず確認してください。

「相談できます」では不十分です。

金額、期間、条件が明確になっているかが重要です。

最後に、家族や第三者に相談する時間を取ってください。

その場で決める必要はありません。

契約を急がせる会社ほど、慎重に見た方が良いと思います。

リースバックは「最後の手段」ではなく「選択肢の一つ」

リースバックは、危険な制度でも、万能な制度でもありません。

あくまで選択肢の一つです。

合う人には合います。

合わない人には合いません。

問題は、合わない人にまでリースバックをすすめてしまうことです。

今回の記事を読んで、私たち不動産会社側が反省すべき点は多いと感じました。

「住み続けられる」

「老後資金が増える」

「固定資産税がなくなる」

このようなメリットだけを伝えるのではなく、

「所有権はなくなります」

「家賃が発生します」

「将来退去が必要になる可能性があります」

「買戻しには資金計画が必要です」

「一般売却より価格が低くなることがあります」

こうしたデメリットも、同じ温度感で伝えるべきです。

メリットだけで契約を取る会社ではなく、デメリットを説明したうえで選んでいただく会社でありたい。

今回の記事を読んで、改めてそう感じました。

最後に

リースバックに関するトラブルの記事を読むと、不安になる方も多いと思います。

「リースバックはやめた方がいいのか」

「自分もだまされるのではないか」

「相談するだけでも危ないのではないか」

そう感じる方もいるかもしれません。

しかし、本当に大切なのは、制度を正しく理解することです。

そして、リースバックだけをすすめる会社ではなく、一般売却や住み替えも含めて比較してくれる会社に相談することです。

ヤマトハウステック(リースバック安心館)では、リースバックを無理におすすめすることはありません。

お客様の状況によっては、一般売却の方が良いとお伝えすることもあります。

今は売らない方が良いとお伝えすることもあります。

それでも、どうしても住み続けながら資金化したい方には、できる限り無理のない条件をご提案します。

リースバックは、人生の後半に関わる大きな契約です。

だからこそ、焦らず、比べて、納得してから決めてください。

今回の記事は、リースバックを扱う私たちにとっても、非常に考えさせられる内容でした。

「契約を取ること」よりも、「契約後に後悔しないこと」。

この姿勢を忘れずに、これからも一件一件のご相談に向き合っていきたいと思います。

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