「実家に帰ったら、不動産会社の名刺が置いてあった」
「親から突然、家を売ったと聞かされた」
「売ったらしいが、今までと変わらずその家に住んでいる」
高齢の親と離れて暮らしているご家族にとって、決して他人事とはいえない話です。
2026年9月、高齢者のリースバック契約をめぐるトラブルが報道されました。
報道された事例の一つは、90代の女性が自宅マンションのリースバックを勧められ、家族が契約内容を十分に把握しないまま署名・押印まで進んでいたというものでした。
近年、リースバックに関する相談は増えており、国民生活センターも2026年8月に改めて注意喚起を行っています。
ただ、私たちは「高齢者がリースバックを利用すること自体が危険」だとは考えていません。
問題は、本人が契約内容を十分に理解しないまま、自宅という大きな資産を手放してしまうことです。
そしてリースバックには、通常の不動産売却とは違う「家族が気づきにくい」という特徴があります。
リースバックは、家を売っても生活風景が変わらない
通常、自宅を売却すれば引っ越しをします。
長年住んだ家から荷物を運び出し、住所も変わります。離れて暮らす家族にも何らかの形で話が伝わることが多いでしょう。
ところがリースバックは違います。
自宅を不動産会社などに売却したあと、その会社と賃貸借契約を結び、今までの家に住み続けます。
つまり、登記上の所有者は変わっていても、本人の生活はほとんど変わりません。
同じ家で寝て、同じスーパーへ買い物に行き、同じご近所さんと顔を合わせる。
家族から見ても「以前と何も変わっていない」ように見えます。
ここが、高齢者のリースバックを考えるうえで見落とされやすい点です。
「まだ実家は親のもの」と思っていたら、すでに売却されていた
リースバックの契約では、大きく分けて二つのことが同時に起こります。
一つは、自宅を売却して「所有者ではなくなる」こと。
もう一つは、その家を借りて「賃借人になる」ことです。
この違いは非常に大きなものです。
所有していたときには必要のなかった家賃が、売却後は毎月発生します。
将来その家を子どもに相続させることも、原則としてできなくなります。
売却したお金を使ってしまえば、自宅という資産を現金化した効果も薄れていきます。
ところが、住んでいる場所が変わらないため、本人だけでなく家族も「家を売った」という事実の重さを実感しにくいことがあります。
数年後、親から、
「家賃を払うのが苦しくなった」
と相談されて、初めて子どもが契約を知る。
あるいは相続の話になって初めて、
「実家はもう親の所有ではなかった」
と知る。
リースバックでは、このようなことが起こり得ます。
高齢者にとってリースバックが合理的な場合もある
一方で、高齢者だからリースバックを利用すべきではない、という話でもありません。
実際に私たちがリースバックのご相談を受けていると、
「年金はあるが、まとまった現金を確保しておきたい」
「住宅ローンやその他の借入れを整理したい」
「子どもはすでに家を持っているので、自宅を相続させる予定はない」
「施設に入るまでは、できるだけ今の家で暮らしたい」
といったご相談があります。
こうした事情で、自宅を現金化しながら住み慣れた家で生活を続けられることは、リースバックのメリットです。
大切なのは年齢ではありません。
「自宅を売却すること」と「これから家賃を支払って住むこと」の両方を理解したうえで選択しているか。
ここが重要です。
本当に確認すべきなのは「いくらで売れるか」だけではない
リースバックの相談では、どうしても買取価格に目が向きます。
もちろん、2,000万円の価値がある不動産を理由もなく1,000万円で売却するような契約であれば、価格の妥当性を慎重に確認する必要があります。
しかし、高齢者のリースバックでは、売却価格だけを比較しても十分ではありません。
例えば、買取価格を高く設定する代わりに家賃も高くなるプランがあります。
まとまった資金が必要な方には合うかもしれませんが、10年、15年と住み続けたい方には、毎月の家賃負担が重くなる可能性があります。
反対に、必要な資金がそれほど多くないのであれば、買取価格を抑えて家賃負担を軽くする考え方もあります。
70歳で契約する方なら、80歳、85歳になったときにもその家賃を支払えるのか。
売却代金のうち、借入金の返済などに使ったあと手元にいくら残るのか。
年金だけになった場合でも生活できるのか。
私たちは、こうしたところまで確認して初めて「リースバックの条件を比較した」といえると考えています。
離れて暮らす親がいるなら、一度確認してほしいこと
高齢の親が一人で暮らしている場合、たまに実家へ帰ったときに、不動産会社の名刺や査定書、見慣れない契約書が置かれていないか気にしてみてください。
不動産会社が来ていること自体が問題なのではありません。
親御さん自身が自宅の将来について考え、相談している可能性もあります。
ただ、
「何の契約をするの?」
「家はいくらで売るの?」
「売ったあと家賃はいくら払うの?」
「いつまで住める契約なの?」
と聞いたときに、本人がほとんど説明できないのであれば、一度立ち止まった方がよいでしょう。
特に注意したいのは、
「今日決めた方がいいと言われた」
「よく分からないけれど、ずっと住めると言われた」
「契約書は持っていない」
といった場合です。
自宅の売却は、その日のうちに決めなければならないものではありません。
家族が契約に反対する必要はない
ここも大切なところです。
親がリースバックを検討していると知ったとき、家族が最初から、
「家を売るなんて絶対にダメ」
と反対する必要はありません。
親には親の事情があります。
子どもに言っていなかった借入れがあるかもしれません。
固定資産税や住宅の維持費を負担に感じているかもしれません。
あるいは、自分の資産は自分が元気なうちに使いたいと考えているかもしれません。
まず聞いてほしいのは、
「なぜ家を売ろうと思ったのか」
です。
その目的を確認したうえで、通常の売却、リースバック、その他の方法を比較すればよいのです。
家族が同席する意味は、契約を止めることではありません。
本人が希望する生活を実現するために、その契約が本当に適しているのかを一緒に確認することにあります。
2026年10月からリースバックに関する新たなガイドラインも
リースバックをめぐるトラブルを受け、国土交通省は「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を策定し、2026年10月1日から施行します。
リースバックでは売買契約だけでなく、その後の賃貸借契約の内容が生活に直結します。
賃料はいくらなのか。
契約期間は何年なのか。
更新できるのか。
どのような場合に契約が終了するのか。
こうした重要な事項について、適切な情報提供を行うことがこれまで以上に求められます。
制度が整備されることは大切ですが、契約する本人や家族が内容を確認することの重要性は変わりません。
リースバック安心館がご家族からの相談も歓迎する理由
リースバック安心館を運営するヤマトハウステックでは、ご本人だけでなく、ご家族からご相談をいただくこともあります。
私たちが大切にしているのは、リースバックを契約してもらうこと自体ではありません。
まず、
「なぜ資金が必要なのか」
「あと何年くらい今の家に住みたいのか」
「毎月いくらまでなら無理なく支払えるのか」
「将来、家を買い戻す予定はあるのか」
を確認します。
そのため、買取価格だけを提示して終わるのではなく、家賃や居住期間、契約形態、買戻しを希望される場合にはその条件まで含めて検討します。
長く住むことを希望される方については、普通借家契約を基本としたご提案も行っています。
そして、ご本人が希望される場合には、ご家族と一緒に説明を聞いていただいて構いません。
むしろ高齢のお客様の場合、大切な自宅を売却する契約だからこそ、納得できるまで確認していただきたいと考えています。
「親がリースバックの話をしている」段階でもご相談ください
すでに契約を決めている必要はありません。
「親が他社からリースバックを勧められている」
「提示された買取価格や家賃が妥当なのか分からない」
「高齢の親だけで契約させてよいのか心配」
「通常売却とリースバックのどちらがよいのか比較したい」
こうした段階でも構いません。
特に大阪・関西でリースバックをご検討されている方については、物件の価格だけでなく、その後の家賃や生活まで含めて条件を検討します。
自宅を売却することは、大きな決断です。
しかし、高齢になってからの自宅売却では、「いくらで売れるか」と同じくらい「売ったあと、どう暮らすのか」が重要です。
親御さん本人だけで抱え込まず、ご家族も一緒に考える。
それだけでも、リースバックのトラブルを防げる可能性は大きくなります。
