先日、証券会社主催の経済セミナーに参加する機会がありました。
マーケットの話だけでなく、日本の人口構造や小売業の現状についても非常に興味深い内容がありました。
不動産業界に身を置く私としても、「これから日本で何が起こるのか」を考えるうえで非常に示唆に富んだ内容だったため、自分なりの考察も交えながら整理してみたいと思います。
日本経済は意外と底堅い
ニュースを見ると、
「物価高」
「景気後退」
「人口減少」
といった暗い話題が目立ちます。
しかしマクロ経済の視点で見ると、日本経済は想像以上に底堅く推移しています。
企業業績は堅調であり、設備投資意欲も比較的強い状態が続いています。
さらに大きな変化として、
「給料が上がらない日本」
が終わりつつあります。
2023年頃から大企業を中心に賃上げが続き、2024年、2025年も高水準の賃上げが実施されました。
長らくデフレが続いた日本ですが、現在は賃金と物価が同時に上昇する局面に入りつつあります。
それでも深刻な人手不足は続く
一方で企業経営者にとって最大の課題は人手不足です。
日本では2014年から2025年にかけて日本人の人口が500万人以上減少しています。
これは単なる景気循環ではありません。
構造的な問題です。
さらに問題なのは、
人口減少の次に
世帯数減少が始まる
ことです。
これまで日本では人口が減っても単身世帯の増加によって住宅需要が維持されてきました。
しかし今後は世帯数そのものが減少する時代に入ります。
不動産業界にとっても非常に大きな転換点になるでしょう。
消費者はどこで買い物をしているのか
経済産業省の商業動態統計を見ると、小売業の勢力図は大きく変化しています。
かつて主役だった総合スーパーや百貨店は苦戦しています。
特にスーパーの衣料品販売は長期的に減少傾向です。
理由は明確です。
衣料品をスーパーで買う人が減ったからです。
その代わりに成長したのがユニクロです。
ユニクロの驚異
現在のユニクロは世界的企業ですが、意外な事実があります。
創業者の 柳井正 氏が本格的な海外進出に挑戦したのは2001年。
当時54歳でした。
今では世界中に店舗を展開していますが、本格的な世界挑戦は50代半ばから始まったのです。
年齢を理由に挑戦を諦める必要はない。
そう感じさせるエピソードでした。
なぜスーパーは苦しいのか
全国スーパーマーケット協会の資料によると、スーパー業界の営業利益率は概ね1~3%程度とされ、平均すると1%前後という非常に薄利な業界です。
売上100億円でも利益は1億円程度。
そこに最低賃金上昇が襲います。
現在、日本政府は地域間賃金格差の縮小を進めています。
つまり地方ほど人件費上昇圧力が強くなる可能性があります。
スーパーは人件費依存型ビジネスです。
利益率1%の世界で人件費が毎年上昇すれば経営は非常に苦しくなります。
店舗数ではなく収益性の時代
かつては
「店舗数が多い企業が強い」
と言われました。
しかし今は違います。
重要なのは利益率です。
例えばディスカウント業態である PPIH(ドン・キホーテ) は高い収益力を維持しています。
一方で総合スーパー業態は苦戦が続いています。
イオンリテール も近年は大型店拡大より収益改善を重視する方向へシフトしています。
イトーヨーカドー も店舗整理と構造改革を進めています。
もはや
「たくさん店を出せば勝てる」
時代ではないのです。
ドラッグストアが強い理由
一方で成長を続けているのがドラッグストアです。
代表企業を挙げるだけでも
· ウエルシアホールディングス
· ツルハホールディングス
· マツキヨココカラ&カンパニー
· コスモス薬品
· サンドラッグ
· スギホールディングス
· クスリのアオキホールディングス
程度であり、スーパー業界よりはるかに集約されています。
医薬品だけでなく、
食品
化粧品
日用品
まで販売できるため収益性も高い。
今後もスーパーからドラッグストアへのシェア移行は続く可能性があります。
コンビニはすでに寡占市場
コンビニ業界を見るとさらに分かりやすいです。
市場はほぼ
· セブン‐イレブン
· ファミリーマート
· ローソン
の3社で占められています。
出店余地も少なくなり、現在は店舗数競争よりも既存店売上競争へ移行しています。
百貨店も二極化している
百貨店も非常に興味深い状況です。
全国の百貨店売上はインバウンド需要の追い風で2024年にはコロナ前を超える水準まで回復しました。
しかしその恩恵を受けているのは一部の旗艦店です。
2024年の店舗別売上ランキングでは、
トップの 伊勢丹新宿本店 が約4,100億円、
2位の 阪急うめだ本店 が約3,600億円という圧倒的な数字を記録しました。
つまり百貨店全体が好調なのではなく、
「勝つ店舗に売上が集中している」
のです。
地方百貨店が苦戦する一方で、
新宿
梅田
銀座
といった超一等地の店舗は過去最高益を更新しています。
最後に
今回のセミナーで最も印象に残ったのは、
「人口が減るから不景気になる」
ではなく、
「勝つ企業と負ける企業の差が極端に広がる」
時代に入ったということです。
スーパー、百貨店、コンビニ、ドラッグストア。
どの業界を見ても同じ現象が起きています。
人手不足は続く。
最低賃金も上がる。
人口は減る。
そんな厳しい環境の中で生き残れるのは、
規模が大きい企業ではなく、
高い収益性を持つ企業です。
不動産業界も例外ではありません。
人口減少の時代だからこそ、ただ物件を増やすのではなく、「利益を生む物件」「需要のあるエリア」に集中することが重要になる。
今回のセミナーは、日本経済の未来を考えるうえで非常に示唆に富んだ内容だったと感じました。
