相続した土地が「負動産」になってしまったら いらない土地を手放すための現実的な選択肢としての「相続土地国庫帰属制度」

相続で土地を取得したものの増える悩み

相続で土地を取得したものの、
「遠方で管理が大変」「固定資産税だけが負担になっている」
といった悩みを抱える方は、年々増えています。

実際、不要な土地を持つことによる負担感は国民意識調査でも高く、約4割が土地所有に対して負担感を持つという結果が出ているほどです。

こうした“負の不動産(負動産)”の増加を背景に、2023年4月にスタートしたのが「相続土地国庫帰属制度」です。
この制度は、相続や遺贈で取得した土地を条件を満たせば国に引き取ってもらえる仕組みであり、従来なかった新しい選択肢として注目されています。

参考:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202303/entry-10064.html

本コラムでは、制度の実務的な活用価値を専門家目線で整理し、メリット・デメリット、記事で触れられている動向を踏まえながら解説します。

「土地を国に返せるの?」という驚きとその背景

従来、日本の相続制度では、土地を単独で放棄することはできませんでした。
相続放棄を選択すると、土地だけでなく預貯金・株式などすべての相続権を失うため、不要な土地のために相続放棄を選ぶケースは現実的ではありませんでした。

参考:ツギノジダイ
https://smbiz.asahi.com/article/15392647

その結果、土地だけが残り、
・固定資産税を払い続ける
・遠隔地の土地の管理に労力がかかる
・倒木・不法投棄・事故発生リスクに直面する
といった負担だけが相続人に残ることが社会課題となっていました。

こうした状況を受けて制度化されたのが、相続土地国庫帰属制度です。
この制度が「不要な土地を手放す方法として機能する」という点は、関係する専門家やメディアでも繰り返し紹介されています。

相続土地国庫帰属制度のメリット

■ 1. 責任と費用からの解放

制度の最大のメリットは、言うまでもなく土地の所有者責任から解放されることです。

土地を所有し続けると、固定資産税の支払いが続き、除草や管理の手間がかかります。
特に使う予定もなく、相続人自身が居住していない地域にある土地では、維持費が実際には大きな負担になります。

国庫帰属を利用すれば、

□ 固定資産税の負担がなくなる
□ 土地の維持管理不要
□ 将来の責任から解放される

という状態になります。

これは単なる税負担の軽減だけでなく、精神的な安心感や世代をまたいで負の遺産を残さないという意味でも重要なメリットです。

■ 2. 適用ニーズの顕在化と利用増加

当初制度が始まった直後は認知度が低く、活用件数も限られていましたが、その後相談件数・申請件数は増加傾向にあります。

ある統計では、制度開始から約2年半で申請数は約4,500件に達し、処理された土地は2,000件以上に上っています。

参考:ライブドアニュース
https://news.livedoor.com/article/detail/30139377/

この数字は、
「多くの相続人が不要な土地処分に悩んでいる」
という事実を裏付けています。

■ 3. 手続き自体が出口につながる場合も

興味深い点として、申請過程で申請者による取り下げが一定数あるという事実があります。
これは一見ネガティブに受け取られがちですが、取り下げ理由の多くは

◇ 隣地所有者が土地を引き受けたいと言ってきた
◇ 自治体が活用を検討したいと申し出があった

といったポジティブな内容です。

参考:マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/premium/article/20250130-3108693/

つまり申請をきっかけに話が進み、結果的に国庫帰属以外の形で土地が活用・処分できるケースがあるということです。

一方で知っておきたいデメリット

制度は魅力的ですが、実務として取り組む前に知っておくべきポイントも多くあります。

■ 1. 利用できる土地の条件が厳しい

国が引き取れる土地は一定の条件を満たしている必要があります。

例えば、

・建物がある土地は不可
・担保権など権利関係が複雑な土地
・境界が明確でない土地
・土壌汚染のおそれがある土地
・管理や処分に過大な労力を要する土地

といったケースは、申請が却下・不承認となる可能性が高くなります。
つまり、厄介な土地ほど国も引き取りにくい構造になっている点には注意が必要です。

■ 2. 手続きは簡単ではない

承認申請書の作成には、境界確認資料、地図、公図、現況写真など多数の添付書類が必要です。
特に境界が不明確な山林や雑種地では、専門家の協力が必要となるケースがほとんどです。

このため、土地家屋調査士、司法書士などの専門家費用が別途かかることがあり、初期コストが無視できないこともあります。

■ 3. 費用負担がある

申請時には審査手数料(約14,000円)が必須であり、**承認後には「負担金」**と呼ばれる費用を支払う必要があります。
負担金は原則として10年分の管理料相当額とされており、土地の分類・面積によって増減します。

単に「国が引き取ってくれる」と考えるのではなく、コストと手間を見積もったうえで活用することが重要です。

■ 4. 時間がかかる

申請から審査決定までの期間は標準で8か月前後ですが、実務的には1年ほどかかっているケースも珍しくありません。

申請中も固定資産税や管理責任が消えるわけではないため、長期計画での対応が求められます。

総括

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を手放すための「新たな選択肢」です。
従来は選択困難だった土地の処分に対して一定の解決策を提供する意義は大きく、社会的ニーズに応じた制度設計であると言えます。

しかし、制度は万能ではなく、利用できる土地は限られ、費用・手間・時間といった現実的負担も存在します。
そのため、

① まずは民間での売却や譲渡の可能性を探る
② 条件が厳しく民間流通が難しい場合に国庫帰属制度を検討する

という優先順位で考えるのが現実的です。

そして、制度を単独で終わらせるのではなく、申請をきっかけに周辺所有者や自治体と対話を進めることで別の出口が見つかる可能性があるという点も重要な視点になります。

不要な土地との向き合い方は人それぞれですが、「判断材料を持つこと」と「早めに行動すること」が何よりの解決につながります。
このコラムが、相続土地の処分に悩むあなたの意思決定の一助になれば幸いです。