はじめに
賃貸住宅を探すとき、「定期借家」と「普通借家」という2つの契約形態を目にすることがあります。どちらも同じ“賃貸契約”ですが、更新制度・契約期間・中途解約・借主保護の強さが大きく異なるため、契約後の暮らしに直結する非常に重要なポイントです。
住まいは生活の基盤であり、契約形態の違いを理解せずに決めてしまうと、思わぬトラブルや余計な出費につながることもあります。
本記事では、法律(借地借家法)に基づいた正確な情報をもとに、2つの契約形態の違いを分かりやすく解説します。
大阪エリアでの賃貸・売買・リースバック支援を行うヤマトハウステックとして、契約選びで後悔しないためのプロ目線のアドバイスも交えながら紹介します。
1. 賃貸借契約の基本ポイント
賃貸借契約とは、貸主が建物を貸し、借主が賃料を支払うことで成立する法律契約です。この契約には主に以下の2種類があります。
- 普通借家契約(従来からある一般的な契約)
- 定期借家契約(2000年に法改正で導入された新しいタイプ)
両者の違いを理解することで、「長く住みたい」「短期間だけ借りたい」「家賃を抑えたい」など、ご自身の目的に合わせた最適な選択ができるようになります。
2. 契約期間と更新制度の違い
普通借家契約:自動更新で“長く住める”
普通借家契約は、借主保護が強い契約形態で、契約期間満了後は自動更新が原則です。
- 更新拒絶には「正当事由」が必要
- 貸主の一方的な都合だけでは更新拒否できない
- 更新料が必要なケースが多い(関西では更新料がない物件も多い)
そのため、長期間住み続けたい方に最も向いている契約形態です。
👉 正当事由とは?
貸主・借主の双方の事情や物件の利用状況を総合的に判断して決まります。「他人に貸したい」「家賃を上げたい」だけでは認められません。
定期借家契約:期間満了で必ず終了(自動更新なし)
定期借家契約では、契約期間が満了すると必ず契約終了となります。更新はなく、継続する場合は再契約が必要です。
- 1年未満の設定も可能(書面必須)
- 貸主は必ず終了させることができる
- 再契約は貸主の任意(義務なし)
借主にとっては住居の継続性に注意が必要ですが、以下のようなメリットもあります。
- 家賃が相場より低い(5〜15%程度安い傾向)
- 良い立地・良質な物件が出やすい(転勤・建替えなど)
- 初期費用を抑えた物件がある(例:UR賃貸の各種割引)
👉 定期借家契約には書面による説明義務 があり、契約書とは別に「契約が更新されないこと」を明記した書面の交付が必須です。
3. 法的な権利と義務の違い
借主保護の強さ(普通借家の特徴)
普通借家契約では、以下のように借主の生活が強く守られています。
- 正当事由なしで更新拒否不可
- 借主からの中途解約が可能(1〜2カ月前通知が一般的)
- 家賃増額は客観的理由が必要(相場や税負担など)
安心して長期居住できます。
定期借家の特徴(貸主の計画性が高い)
一方、定期借家契約では貸主の権利が強く、物件の利用計画を立てやすい利点があります。
- 契約満了で確実に退去
- 再契約は貸主の自由
- 賃料の増減額請求を制限する特約も可能
ただし、借主にも最低限の保護があります。
例外:借主のやむを得ない事情で中途解約可
借地借家法38条5項
- 床面積200㎡未満
- 転勤、療養、親族の介護等のやむを得ない事情
- 1か月前の解約申入れで終了
これは実務でも非常に重要なポイントです。
4. 費用面の違い(家賃・初期費用・長期コスト)
家賃水準の比較
一般的な傾向として:
- 定期借家は家賃が5〜15%低い
- 普通借家は相場通り・または若干高めも多い
理由は、定期借家契約は「期間満了で退去リスク」があることの対価として家賃が低く設定されるからです。
初期費用の違い
物件により異なりますが、以下の傾向があります。
- 定期借家:敷金・礼金が抑えめのことが多い
- 普通借家:一般的な初期費用(礼金・更新料など)
UR賃貸では、「U35割」「そのママ割」などの制度で
礼金・更新料・仲介手数料が不要となることがあり、費用面で非常に有利です。
長期的な費用面の比較
| 契約形態 | 短期(〜3年) | 長期(5年以上) |
|---|---|---|
| 普通借家 | 更新料あり | 安定性が高い・家賃変動リスク低い |
| 定期借家 | 家賃が安くお得 | 再契約の家賃上昇・退去リスクあり |
👉 短期なら定期借家、長期なら普通借家が有利 という構図はほぼ正しいです。
5. 中途解約と契約終了の手続き
普通借家契約:借主は柔軟に中途解約できる
借主の中途解約は多くの契約で
- 1〜2ヶ月前の通知で可能
- 違約金なし(特殊契約を除く)
生活の変化に対応しやすいのが特徴です。
定期借家:原則中途解約不可
ただし例外として、
- 床面積200㎡未満の住居
- やむを得ない事情(転勤・介護など)がある場合
これに該当すれば、借主から中途解約が可能です。
※違約金特約がある場合はその内容に従います。
6. 物件選択時の判断基準
住む期間で選ぶ
- 短期(〜3年) → 定期借家がお得
- 長期(5年以上) → 普通借家で安定
- 中期(3〜5年) → 再契約条件・相場動向を考慮
ライフステージで選ぶ
- 若年層・単身・転勤族:定期借家の柔軟性がメリット
- 子育て世帯・高齢者:普通借家の安定性が適している
経済面から見た選択
- 家賃を抑えたい → 定期借家
- 長期の家計計画を安定させたい → 普通借家
まとめ
「普通借家契約」「定期借家契約」は、どちらが良い・悪いではなく、目的により使い分けるべき契約です。
- 長く住みたいなら → 普通借家契約
- 短期で安く借りたいなら → 定期借家契約
契約前には必ず内容を確認し、不明点は不動産会社へ相談することが重要です。
大阪エリアでの賃貸・売却・リースバックなど住まいの相談は、地域密着で丁寧な対応を行う
ヤマトハウステック までお気軽にお問い合わせください。
