リースバックの「押し買い」が社会問題に。現場で取引を行う不動産会社として考えること

近年、自宅を売却した後も住み続けられる「リースバック」の認知度が高まる一方、その仕組みを悪用した不動産取引が問題になっています。

2026年10月の読売新聞では、「家売却後も賃貸居住 業者悪用」「リースバック 押し買い多発」と題し、高齢者を中心とした不動産の強引な買取勧誘や、契約をめぐるトラブルが取り上げられました。

報道によると、売却する意思が十分にない所有者に対して長時間の勧誘を行い、相場より安い価格で自宅を買い取るといった事例が発生しています。また、国土交通省も被害防止に向けた対応を進めています。

私たち株式会社ヤマトハウステックも、大阪を中心に関西圏でリースバック事業を行う不動産会社として、今回の報道を重く受け止めています。

ただし、ここで区別しておきたいのは、リースバックという取引自体に問題があるわけではないということです。

問題の本質は、売主が十分に理解・納得しないまま、不動産という大切な財産を手放してしまう取引のあり方にあります。

今回は、日頃からリースバックの査定や買取、賃貸管理に携わる立場から、今回の報道について考えてみたいと思います。

リースバックの買取価格が通常売却より安くなるのには理由がある

リースバックについてご相談をいただく際、最も多い質問の一つが「普通に売却する場合と比べて、なぜ買取価格が安くなるのか」というものです。

一般的な不動産売却であれば、買主は購入後に自分で住むことも、空き家として売却することもできます。

一方、リースバックでは、買主は購入した不動産を売主に賃貸し、その後も居住を継続していただくことが前提になります。

つまり、買主にとっては賃貸中の収益不動産を取得する取引です。

そのため、買取価格を算定する際には、周辺の不動産相場だけでなく、設定する家賃、固定資産税、建物の維持管理費、将来の修繕費、退去後の再販売価格などを総合的に検討する必要があります。

例えば、月額8万円の家賃であれば、年間賃料は96万円です。

仮に買取価格が1,000万円の場合、表面利回りは9.6%になります。

しかし、そこから固定資産税や火災保険料、修繕費などを負担するため、実際の収益率はさらに低くなります。

築年数の古い戸建住宅では、屋根や外壁、給排水設備などに将来的な修繕費が発生することも珍しくありません。

また、売主が長期間居住される場合、購入後すぐに空き家として再販売することもできません。

こうした事情から、リースバックの買取価格が通常売却価格より低くなることには、一定の合理性があります。

ただし、だからといって、相場より著しく安い価格で買い取ってよいという話にはなりません。

大切なのは、その買取価格がどのような根拠で算定されているのかを、売主に説明できることです。

私たちは、通常売却した場合の想定価格とリースバックの買取価格を区別し、売却後の家賃負担も含めて検討していただくことが重要だと考えています。

高い買取価格が、必ずしも良いリースバックとは限らない

リースバックの査定では、複数の不動産会社に相談される方も少なくありません。

当然ながら、売主にとって買取価格が高いことは魅力です。

しかし、リースバックでは買取価格と家賃が密接に関係しています。

一般的に、買取価格が高くなれば、それに見合う賃料設定が必要になる場合があります。

例えば、買取価格が1,000万円で月額家賃が8万円の場合と、買取価格が1,300万円で月額家賃が12万円の場合を比較してみます。

後者は売却時に300万円多く受け取れますが、家賃の差額は毎月4万円、年間48万円になります。

単純計算では、6年3か月で家賃の差額が300万円に達します。

もちろん、税金や諸費用、将来の資金運用などによって実際の損得は変わりますが、目先の買取価格だけで判断することが適切でないことは分かります。

特に、年金収入を中心に生活されている方の場合、毎月の家賃が将来にわたって無理なく支払えるかどうかは、売却価格と同じくらい重要です。

私たちが査定の際に重視するのも、この買取価格と家賃のバランスです。

売却時に多くの資金を受け取れたとしても、その後の生活が成り立たなくなってしまっては、リースバック本来の目的から外れてしまいます。

「売却後も住み続けられる」という説明だけでは不十分

リースバックのトラブルを考えるうえで、もう一つ重要なのが賃貸借契約の内容です。

住宅のリースバックでは、主に「普通借家契約」と「定期借家契約」が利用されています。

普通借家契約は、契約期間が満了しても、貸主が自由に更新を拒絶できるわけではありません。貸主からの更新拒絶や解約には、原則として法律上の正当事由が必要になります。

一方、定期借家契約は、法律で定められた要件を満たして締結された場合、原則として契約期間の満了によって終了します。

例えば、5年間の定期借家契約であれば、5年後に当然に住み続けられるという保証はありません。引き続き居住するには、貸主との再契約が必要になります。

この違いは、特に高齢者のリースバックでは極めて重要です。

70歳で契約した方が、75歳や80歳になってから新たな住居を探さなければならなくなる可能性もあるためです。

私たちは、リースバックの説明において「売却後も住めます」という言葉だけでは不十分だと考えています。

いつまで住めるのか。どのような条件で住み続けられるのか。将来、退去が必要になる可能性はあるのか。

こうした点を契約前に具体的に説明し、理解していただくことが欠かせません。

高齢者の不動産売却では、ご本人の意思確認が何より重要

今回の報道で特に気になるのは、高齢者が強引な勧誘の対象となっている点です。

リースバックをご相談される方の中には、住宅ローンや借入金の返済、老後資金の確保、相続問題など、さまざまな事情を抱えている方がいらっしゃいます。

中には、早急に資金を必要とされる方もいます。

しかし、資金を必要としていることと、自宅を売却する意思があることは、必ずしも同じではありません。

また、ご家族が売却を希望されていても、所有者ご本人が十分に納得していない場合も考えられます。

不動産の売買契約は、原則として一度成立すると、簡単に白紙撤回できるものではありません。

そのため、特に高齢の方との取引では、ご本人が売却の意味を理解されているか、売却後は所有権がなくなることを認識されているか、家賃の支払いが継続することを理解されているか、といった点を丁寧に確認する必要があります。

必要に応じて、ご家族にも説明の場に同席いただくことは有効ですが、最終的に尊重すべきなのは所有者ご本人の意思です。

私たちは、契約を急がせるのではなく、十分に検討していただく時間を設けることも、不動産会社の重要な役割だと考えています。

自社で買い取り、保有するリースバックだからこその責任

リースバックを取り扱う不動産会社にも、さまざまな事業形態があります。

自社で不動産を買い取り、そのまま保有して賃貸する会社もあれば、投資家や別の不動産会社に売却することを前提に取引を組み立てる会社もあります。

どちらの形態にもそれぞれの特徴がありますが、利用者にとって重要なのは、売却後に誰が所有者となり、誰と賃貸借契約を結ぶのかという点です。

株式会社ヤマトハウステックが運営する「リースバック安心館」では、自社買取・保有型のリースバックを中心に取り扱っています。

自社で買い取った不動産を保有し、売却後も賃貸人としてお客様との関係が続くため、私たちにとってリースバックは、売買契約が成立すれば終わりという取引ではありません。

建物の維持管理や修繕、賃貸借契約の更新、将来の買戻しのご相談など、購入後もさまざまな対応が必要になります。

また、建物の老朽化による修繕費や、将来的な不動産価格の変動リスクも考慮しなければなりません。

そのため、査定段階から建物の状態や将来の資産価値を慎重に見極め、無理のない取引条件を設定する必要があります。

私たちは、リースバックを単なる不動産買取の手法ではなく、売却後の居住を含めた長期的な取引として捉えています。

リースバックが最善の選択とは限らない

リースバックを専門に取り扱っているからこそ、お伝えしておきたいことがあります。

それは、すべての方にリースバックが適しているわけではないということです。

例えば、将来的に住み替えを予定されている方であれば、通常売却して賃貸住宅に移る方が、手元に残る資金が多くなる場合があります。

また、必要な資金が比較的少額であれば、不動産を売却する以外の方法を検討できるケースもあるでしょう。

反対に、現在の自宅に住み続けることを優先し、まとまった資金を確保したい方にとっては、リースバックが有効な選択肢となることもあります。

重要なのは、最初からリースバックありきで話を進めないことです。

通常売却した場合の価格、リースバックの買取価格、売却後の家賃、今後の生活資金などを比較し、ご本人にとって何が最も合理的なのかを考える必要があります。

不動産会社に求められるのは、契約件数よりも取引の適正さ

今回の新聞報道は、リースバックを取り扱う不動産業界全体にとって、改めて取引のあり方を考える機会になったと感じています。

不動産は、多くの方にとって人生で最も大きな資産の一つです。

特に、長年住み続けてきた自宅には、金銭的な価値だけでは測れないものがあります。

その大切な財産を売却する以上、不動産会社には、価格や契約条件について正確に説明する責任があります。

また、売主にとって不利になる可能性がある事項についても、曖昧にせず伝える必要があります。

リースバックは、資金面の問題を解決する有効な方法になり得ます。しかし、売却によって新たな生活上の問題が生じてしまっては意味がありません。

私たち株式会社ヤマトハウステックは、今後も不動産の適正な査定と丁寧な契約説明を基本とし、お客様が十分に理解・納得したうえで判断できる取引を大切にしていきたいと考えています。

リースバックを検討されている方は、買取価格の高低だけでなく、売却後の家賃や契約期間、将来の生活まで含めて比較してみてください。

そして、少しでも疑問や不安があれば、契約前に確認することをおすすめします。

不動産の売却は、急いで結論を出すことよりも、納得して判断することが何より大切です。

株式会社ヤマトハウステック|リースバック安心館
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