令和8年地価公示では、全国の地価が**全用途平均で前年比プラス2.8%、住宅地でプラス2.1%、商業地でプラス4.3%**となり、いずれも上昇基調が続きました。三大都市圏では上昇幅が拡大し、大阪圏は住宅地プラス2.5%、商業地プラス7.3%と、全国の中でも強い動きを示しています。つまり、令和8年の関西不動産市場は「全体として上昇」ではあるものの、実態としては都心・駅近・再開発エリアが強く、郊外・人口減少エリアは伸び悩むという二極化がより鮮明になった年だといえます。
地価公示を見る際にまず押さえておきたいのは、これは個別不動産の売買価格そのものではなく、毎年1月1日時点における標準地の1㎡当たりの正常な価格であり、近隣地域の標準的な画地の価格水準を示すものだという点です。したがって、実際の査定や売却価格では、接道条件、形状、面積、建物の有無、駅距離などの個別事情を加味する必要があります。そのうえで、地価公示は「どのエリアに追い風が吹いているか」「逆にどのエリアが弱いか」を読むうえで非常に有効です。
大阪府は関西で最も力強い上昇基調
大阪府は令和8年地価公示で、**住宅地がプラス2.8%、商業地がプラス8.5%、工業地がプラス7.5%**となりました。住宅地は5年連続、商業地は4年連続、工業地は11年連続の上昇です。関西の中でも特に商業地の伸びが大きく、インバウンド回復、再開発、オフィス・ホテル・店舗需要、さらにマンション用地需要が地価を押し上げています。
大阪府内で特に上昇が強いのは大阪市中心部です。府資料では、住宅地の対前年上昇率1位は大阪市北区紅梅町でプラス10.9%、商業地の対前年上昇率1位は**大阪市中央区道頓堀でプラス25.0%でした。また、市区町別平均でみても、住宅地は大阪市浪速区10.9%、西区10.5%、北区9.2%が上位で、商業地は浪速区・中央区15.5%、西区15.3%、福島区15.0%**と、大阪市の都心部に上昇が集中しています。
一方で、大阪府内に下落地点が消えたわけではありません。住宅地の下落率上位1位は岬町深日でマイナス4.3%で、府資料でも岬町、千早赤阪村、能勢町など交通利便性で見劣りする地域の下落継続が示されています。つまり大阪府は「府全体が強い」のではなく、大阪市中心部・北大阪・利便性の高い住宅地は強く、南端部や交通条件の弱いエリアは依然として厳しいという構図です。
京都府は上昇継続だが、北部との温度差が非常に大きい
京都府は令和8年地価公示で、**住宅地プラス2.3%、商業地プラス7.9%、工業地プラス8.2%となりました。商業地の伸びは全国でも上位水準で、京都観光の回復、ホテル・店舗需要、都心再評価の影響が色濃く出ています。平均価格でも、商業地は1,006,700円/㎡**と前年から大きく上がっています。
京都府の特徴は、京都市中心部の強さと、府北部の弱さが同時に進んでいることです。京都府資料では、住宅地の平均変動率は**京都市3.6%、中心5区3.9%と高く、商業地は京都市10.1%、中心5区9.6%です。区別では、商業地で東山区14.4%、南区19.6%、中京区10.3%、下京区10.2%**など高い伸びが確認されており、観光・都心・交通利便の強いエリアに資金が集中していることが読み取れます。
その一方で、京都府資料では、**中丹地域は住宅地マイナス0.4%・商業地マイナス0.3%、丹後地域は住宅地マイナス0.4%・商業地マイナス0.5%**となっており、府北部はなお弱含みです。つまり京都府をひとくくりに「上がっている」と評価するのは危険で、京都市都心とその周辺は強いが、北部は引き続き下落圧力が残るという整理が実務的には正確です。
兵庫県は阪神間・神戸・東播磨が強く、地方部との二極化が鮮明
兵庫県は令和8年地価公示で、**住宅地プラス2.2%、商業地プラス4.0%、工業地プラス8.2%**となりました。住宅地・商業地とも4年連続上昇、工業地は11年連続上昇です。特に兵庫県では、神戸・阪神間・東播磨の強さと、但馬・丹波・西播磨など地方部の弱さが数字にはっきり表れています。
地域別にみると、住宅地は**神戸2.9%、阪神南3.5%、阪神北2.6%、東播磨2.8%と堅調で、商業地も神戸6.1%、阪神南6.8%、阪神北4.2%、東播磨4.1%と高い伸びです。反対に、住宅地は西播磨マイナス0.7%、但馬マイナス0.9%、丹波マイナス0.7%**で、地方部の弱さが続いています。県資料でも、利便性に優れる都市部では上昇幅が拡大し、過疎化の進む地方部では下落が継続し、県内の二極化傾向がさらに鮮明と整理されています。
個別の象徴的な地点としては、住宅地の最高価格地点が芦屋市船戸町で815,000円/㎡、住宅地の上昇率最高地点が淡路市浦でプラス8.1%、商業地の最高価格地点が神戸市中央区三宮町で8,000,000円/㎡、商業地の上昇率最高地点が芦屋市業平町でプラス12.6%、工業地の上昇率最高地点が**神戸市東灘区深江浜町でプラス16.7%**となっています。阪神南地域や神戸港湾部では、再開発や物流需要がなお強く、兵庫県内でも特に上昇圧力が高いゾーンです。
奈良県は全用途で18年ぶりの上昇だが、住宅地はなお下落
奈良県は今回の公示で、全用途平均がプラス0.1%となり、18年ぶりに上昇へ転じました。 ただし中身を見ると、住宅地はマイナス0.1%で18年連続の下落、商業地はプラス1.0%で4年連続上昇、工業地はプラス2.0%で11年連続上昇です。つまり奈良県は「全面回復」とまではいえず、商業地・工業地が県全体を押し上げた一方、住宅地はまだわずかに下落しているというのが正確な見方です。
奈良県資料では、住宅地の継続調査303地点のうち、上昇101地点、横ばい41地点、下落161地点となっており、上昇地点も増えているものの、依然として下落地点が過半を占めています。南部では下落が目立ち、**吉野町は全用途マイナス3.2%、大淀町マイナス2.8%、下市町マイナス3.3%**と弱い動きが続いています。奈良県は大阪への通勤圏に近い北部・中和の一部と、人口減少の進む南部で温度差が大きく、今後もこの傾向は続く可能性があります。
滋賀県は関西で見ても着実に改善、県南部中心に上昇エリアが拡大
滋賀県は令和8年地価公示で、全用途プラス1.7%、住宅地プラス0.9%、商業地プラス2.8%、工業地プラス6.8%となりました。令和6年に地価上昇へ転じた後、令和7年、令和8年と上昇幅が拡大しています。滋賀県資料でも、駅徒歩圏、市街地中心部、交通量の多い路線沿いでの需要の強さが地価を押し上げていると明記されています。
特に強いのは県南部です。資料では、大津地域、南部地域、甲賀地域、東近江地域、湖東地域の10市2町が上昇し、なかでも草津市、守山市、栗東市の上昇幅が大きいとされています。住宅地では、前年に続き上昇したのが大津市、近江八幡市、草津市、守山市、栗東市、野洲市で、さらに甲賀市が横ばいから上昇、湖南市が下落から上昇へ転じました。商業地でも大津市、彦根市、近江八幡市、草津市、守山市、栗東市、甲賀市、野洲市、東近江市が上昇し、湖南市も横ばいから上昇に転じています。
一方で、湖北・高島などでは弱い地点も残っています。滋賀県資料の下落幅上位では、住宅地で甲賀市甲賀町高嶺がマイナス5.0%、商業地で**長浜市大寺町がマイナス2.1%**などが示されており、県内でも立地差は明確です。したがって滋賀県は「全県一律上昇」ではなく、大津・草津・守山・栗東を中心に県南が強く、北部や利便性の弱いエリアはなお慎重に見るべき市場といえます。
和歌山県は依然として下落県だが、下落幅はかなり縮小している
和歌山県は令和8年地価公示でも、全用途マイナス0.4%、住宅地マイナス0.6%、商業地マイナス0.1%と下落が続いています。全用途では平成4年から35年連続の下落ですが、県資料では下落幅は令和5年から4年連続で縮小していると整理されています。つまり、和歌山県はまだ上昇県ではないものの、下げ止まりに近づいている地点が増えているという局面です。
住宅地では、上昇地点が23地点あり、和歌山市、海南市、田辺市、紀の川市、岩出市、有田川町、白浜町、上富田町、那智勝浦町、串本町などに分布しています。県資料では、利便性に優れた住宅地や、津波被害の想定区域外の高台などで需要が堅調とされ、上富田町は12年連続、岩出市は2年連続で上昇です。逆に言えば、和歌山県全体が弱いというより、和歌山市周辺や一部観光・生活利便エリアは持ち直し、山間部や需要の薄い地域はなお厳しいと捉えるべきです。
令和8年の関西地価公示で見えた本当のポイント
令和8年の関西地価公示を一言で表すなら、**「上昇相場の継続」ではなく「立地による選別の加速」**です。大阪は都心商業地と高利便住宅地が強く、京都は都心と北部で明暗が分かれ、兵庫は阪神間・神戸・物流適地が牽引し、奈良は商業地・工業地が改善する一方で住宅地はなお弱く、滋賀は県南主導で上昇エリアが拡大し、和歌山は依然下落ながらも下落幅の縮小が鮮明です。
不動産売却、購入、仕入れ、リースバック、相続対策、資産組み換えを考える際には、「関西の地価は上がっている」「この県は強い」といった大づかみな見方では不十分です。今は県単位よりも、市区町村単位、さらに駅距離・再開発・生活利便性単位で判断する時代です。地価公示はその出発点として非常に有効ですが、最終判断では路線価、実勢価格、周辺成約事例、需給バランスまで含めて立体的に見る必要があります。
