はじめに
中古物件のリノベーションは近年注目を集めています。新築より割安な価格で理想の住まいを手に入れられるだけでなく、自由な間取りや内装デザインを実現できるメリットがあるためです。しかし、中古物件には様々な留意点もあり、うまくリノベーションできなければ予期せぬトラブルに見舞われかねません。本記事では、中古のリノベーションのメリット・デメリットを解説するとともに、失敗しないためのポイントをお伝えします。
中古リノベーションのメリット
予算を抑えられる
中古物件をリノベーションする最大のメリットは、予算を大幅に抑えられることです。新築と比較して3〜4割も安価に購入できることが多く、ローンの返済額も圧縮できます。
立地の選択肢が広がる
新築分譲物件は限られた地域にしか供給されませんが、中古物件であれば人気エリアの良質な立地を選べる可能性が高まります。駅近や閑静な住宅街、教育環境に恵まれた地域など、ライフスタイルに合わせて自由に選択できるのが大きな魅力です。
自由な間取り・デザインが実現できる
新築住宅は間取りや仕様がある程度決まっていますが、中古物件のリノベーションであれば、自分好みの理想の間取りやデザインにカスタマイズできます。家族構成やライフスタイルに合わせて、無駄のない動線や使い勝手の良い空間を作り上げることができるのです。
建物の構造次第ではありますが、耐力壁を残したままでも一部の間仕切り壁を自由に変更できます。また、カフェ風のオープンキッチンやリビング学習スペース、人気のウォークインクローゼットなども実現が可能です。プロのデザイナーとも相談しながら、理想を形にすることができるのがリノベーションの醍醐味といえるでしょう。
中古リノベーションのデメリット
中古物件のリノベーションには、メリットと同様にデメリットも存在します。事前にデメリットを理解し、対策を立てておくことが大切です。
物件の状態が不透明
新築住宅であれば耐震性や設備性能はハウスメーカーの基準を満たしていますが、中古物件の場合は建物の劣化具合を正確に把握することが難しいのが現状です。特に地中や天井裏の状況は目視確認ができず、事前の専門家による綿密な調査が不可欠となります。
リノベーション後のトラブルを防ぐため、インスペクション費用をかけて建物の耐久性を専門家に確認することをおすすめします。構造上の大きな問題が見つかれば、補強工事を行うなど対策を講じる必要があります。
間取り変更に制限がある場合も
構造によっては、理想の間取りに変更することが難しい場合もあります。たとえば、ツーバイフォー工法やプレハブ住宅は間仕切り壁の可動範囲が限られています。また、マンションの場合は共用部分のリノベーションは原則できません。
物件選びの際に間取り変更の可能性をよく確認し、理想が実現できないようであれば候補から外す必要があります。在来工法の木造住宅であれば、間取り変更の自由度は高くなります。
ローンの審査が厳しい
中古物件のリノベーション費用を含めた総額がある程度高くなると、住宅ローンの審査が通りにくくなる傾向にあります。老朽化が進んでいる物件は基準を満たせないリスクもあるため、年数の浅い中古物件を選ぶなどの対策が必要かもしれません。
また、再建築不可物件や建ぺい率・容積率オーバーの物件は、ローンが組めない場合もあります。物件選びの段階で、ローン審査の観点からも検討しておくことが重要です。
中古リノベーションで失敗しないポイント
中古物件のリノベーションを成功させるためには、以下のようなポイントに注意する必要があります。
物件の状態を徹底調査する
中古物件の購入を検討する際は、まず専門家に建物の状態を確認してもらうことが不可欠です。建築年月日だけでなく、構造・耐震性能、設備の劣化具合などを詳しく診断してもらいましょう。インスペクション費用はかかりますが、後々のトラブル回避につながります。
構造によっては、一部解体してスケルトンにする必要がある場合もあります。基礎、柱、梁の状態を隅々まで確認し、補強工事が必要かどうかを見極めることが重要です。
間取り変更の可能性を事前に確認
理想の間取りにリノベーションできるかどうかは、物件の構造に大きく依存します。希望する間取り変更が可能かを確認するためには、次の2点をチェックする必要があります。
- 間取り変更に適した構造か
- 建ぺい率・容積率などの法的制限はないか
ラーメン構造や木造軸組工法の住宅は間取り変更がしやすく、敷地面積も広ければ増築の余地もあります。一方、法的制限がある物件では理想の間取りが実現できない可能性が高くなります。事前の確認が肝心です。
リノベーション予算と期間を立てる
リノベーションの予算と期間は、内容によって大きく異なります。水回りの設備交換のみであれば300万円程度と抑えられますが、大がかりな間取り変更やリフォームとなると1,000万円以上かかる場合もあります。
最初に全体のイメージを立て、優先順位をつけて予算を見積もることが重要です。工事期間は4〜6か月程度が目安ですが、マンション改修なら1〜3か月、新築に近い大規模リノベーションなら9か月以上かかるケースもあります。
改修中の仮住まいの期間や費用も忘れずに考慮し、無理のない計画を立てましょう。
リノベーション住宅の保証は?
新築住宅と同様に、リノベーション住宅にも保証制度が存在します。全面リノベーションの場合、10年間の瑕疵担保責任を負う業者もいます。また、リノベーション済み中古住宅を買う際にも、瑕疵保険や既存住宅売買瑕疵保険に加入し手続きすることで、将来の瑕疵トラブルに備えられます。
リフォーム工事の保証
リノベーション工事の保証期間は業者により異なりますが、通常は最低でも1年間は保証されます。ハウスメーカーなどの大手業者では5年や10年の長期保証が付く場合もあり、安心して任せられます。
また、部位ごとに保証期間が異なることも珍しくありません。例えば、
- 窓やサッシ部分なら10年程度
- 他の建具なら5年間
- 設備機器なら2〜3年間
といった具合です。予め保証内容を確認し、自身のニーズに合った業者を選びましょう。
リノベーション瑕疵保険への加入
業者の保証はあくまでも任意であり、万が一のトラブル時には十分ではない可能性があります。そこで、リノベーション瑕疵保険に加入しておくことをおすすめします。この保険であれば、業者が倒産した場合でも工事の瑕疵に対して一定の補償を受けられます。
とはいえ、加入には修繕積立金などの自己資金が必要になるケースがあり、費用面でのハードルが高いのが現状です。保険内容や費用は事前に確認し、リスクとコストの兼ね合いを見極めましょう。
まとめ
新築より割安な価格で、自由な間取りやデザインが可能なリノベーション。立地の良い中古戸建てを選べば、お値打ちな理想の住まいを手に入れられます。一方で、中古物件には様々な潜在的なリスクが伴い、事前調査の甘さはトラブルにつながりかねません。
物件探しの段階から専門家に建物状態を確認してもらい、リノベーション内容によるコストと期間の見積もりを立てましょう。リノベーション済み中古住宅の購入を検討するなら、瑕疵保険への加入も視野に入れる必要があります。
慎重な検討と準備を重ね、中古のリノベーションを賢く活用することで、きっと理想の住まいが手に入るはずです。