はじめに
不動産の査定と売却は複雑な過程で、多くの人が適正価格を見極めるのに苦労しています。査定額と売却額が異なることは珍しくありませんが、その差を最小限に抑えることが重要です。本記事では、査定と売却の関係性について詳しく解説し、適正な価格で円滑に不動産を売却するためのポイントを紹介します。
査定額と売却額の違い
査定額と売却額の違いを理解することが、不動産売却の第一歩です。査定額は不動産会社が物件の状態や立地条件などから算出した「売れそうな価格」の目安ですが、実際の売却額は買主との交渉によって決まる「成約価格」です。つまり、査定額は予想価格に過ぎず、実際の取引価格とは異なるのが一般的です。
査定額の特徴
査定額は不動産会社が専門的な知識と経験に基づいて算出しますが、完全に客観的なものではありません。同じ物件でも、不動産会社によって査定額が異なることがよくあります。これは、会社ごとに査定方法が異なるためです。また、高額な査定額を提示して売却を依頼してもらおうとする業者も存在するため、査定額の根拠をしっかり確認する必要があります。
一方で、信頼できる不動産会社による適正な査定額は、物件価値の参考にはなります。ただし、あくまでも目安に過ぎないことを忘れずに、売却額の予想価格としてとらえましょう。
売却額の決定要因
実際の売却額は、不動産会社と買主の双方の事情や交渉力によって左右されます。例えば、買主の予算や希望条件、売却の急がれ具合、周辺の物件動向などが影響します。売主と買主の主観的な価値観の違いも無視できません。そのため、査定額より低い金額で売却されることが多いのが実情です。
売却額を最大化するには、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な査定額を把握することが重要です。さらに交渉力のある不動産会社を選び、効果的な売却活動を行うことで、査定額に近い高額での売却を目指せます。
査定の種類と方法
不動産会社は様々な査定方法を使い分けて、物件の適正価格を算出しています。主な査定の種類と方法について解説します。
査定の種類
査定には以下の3種類があります。
- 売却査定: 物件を売却する際の適正価格を算出するもの
- 買取査定: 不動産会社が物件を直接買い取る場合の価格を算出するもの
- 賃料査定: 物件を賃貸した場合の家賃相場を算出するもの
売却を検討している場合は、まず売却査定を受けることをおすすめします。売却査定で適正価格を把握した上で、買取査定とも比較することで、より有利な条件を見つけられます。
査定方法の種類
査定方法 | 概要 | 適用物件 |
---|---|---|
取引事例比較法 | 過去の売買事例を参考に査定する方法 | マンション、戸建ての土地 |
原価法 | 建物を新築する費用から減価修正して査定する方法 | 一戸建ての建物部分 |
収益還元法 | 物件の収益力から査定する方法 | アパート、賃貸マンション |
これらの査定方法は、物件の種類や目的に応じて使い分けられています。例えば、マンションの売却査定では主に取引事例比較法が用いられますが、戸建ての場合は土地部分と建物部分でそれぞれ異なる方法が適用されます。
査定額の適正性を見極める
不動産会社から提示された査定額が適正かどうかを確認することは非常に重要です。高すぎる査定額を鵜呑みにすると、結果的に売れ残ったり、大幅な値下げを強いられたりするリスクがあるためです。査定額の適正性を見極めるためのポイントを解説します。
複数の査定を比較する
査定額が適正かどうかを判断するには、複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額を比較することが有効な方法です。業者によって査定額が大きく異なる場合は、その根拠を詳しく聞いて判断する必要があります。
ただし、高額な査定額だけを追求するのは危険です。むしろ、査定の根拠が適切で、的確なアドバイスをしてくれる業者を選ぶことが大切です。高額な査定額を提示するが、実際の売却サポートが不十分な業者もいるため、注意が必要です。
相場価格を調べる
不動産業界の公的機関が提供している情報サイトや、民間の不動産情報サイトを活用して、エリアの相場価格を自分で調べることをおすすめします。そうすれば、不動産会社から提示された査定額が適正かどうかの判断材料になります。
相場価格と比べて査定額が20%以上高い場合は、慎重に検討する必要があります。一方、査定額が相場価格を大きく下回っている場合も、物件の価値を十分に引き出せていない可能性があるため、注意が必要です。
不動産会社の信頼性を確認する
適正な査定額を得るためには、信頼できる不動産会社を選ぶことが何より重要です。会社の実績や口コミ、担当者の対応などから、その会社の信頼性を総合的に判断しましょう。
特に高額な査定額を提示する会社は慎重に吟味する必要があります。査定額の根拠を詳しく聞き、適正な説明が得られない場合は、別の会社を検討するべきでしょう。
売却活動と交渉のポイント
査定額を確認したら、実際の売却活動と買主との交渉に移ります。ここでは、売却活動と交渉のポイントについて解説します。
広告の掲載と内見対応
不動産会社と媒介契約を結んだら、次は効果的な広告掲載と内見対応が重要になります。適切な広告掲載で物件の魅力を発信し、多くの買主に興味を持ってもらうことが必須です。また、内見時の対応によっても購入意欲が大きく左右されるため、不動産会社のサポートに期待がかかります。
広告掲載と内見対応が不十分な業者を選んでしまうと、結果的に売却が滞る可能性があります。したがって、これらのサポート体制を事前に確認し、適切な広告掲載と内見対応が見込める業者を選ぶべきです。
価格交渉のポイント
査定額通りの価格で売却できればベストですが、実際にはほとんどの場合、買主との交渉を経て売却額が決まります。交渉に臨む際は、自分の主張だけでなく、買主の事情にも耳を傾けることが大切です。
交渉のポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 査定額の根拠と物件の魅力を的確に説明する
- 買主の予算や希望条件をしっかり聞く
- 買主のニーズに合わせて、一定の値下げは柔軟に対応する
- 交渉のタイミングとペースを上手く捉える
交渉は難しいプロセスですが、不動産会社の交渉力に期待できれば、売却額を最大限確保しやすくなります。
まとめ
不動産の査定額と実際の売却額には差が生じるのが一般的です。しかし、その差を最小限に抑え、適正な価格で不動産を売却するためのポイントは以下の通りです。
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な査定額を把握する
- 高額な査定額だけに惑わされず、査定の根拠を確認する
- 専門家に相談し、信頼できる不動産会社を選ぶ
- 効果的な広告掲載と内見対応を期待できる業者を選ぶ
- 買主との価格交渉を適切に行う
適正な査定額の把握と優れた不動産会社の選定が、高額売却への第一歩となります。丁寧な売却活動と交渉を通じて、査定額に近い金額で、きちんと売却できるはずです。