はじめに
寒い季節が近づくにつれ、快適な暖房システムを選ぶことが重要になってきます。その中でも注目されているのが、高効率で環境にやさしいヒートポンプ式の床暖房です。この記事では、ヒートポンプ式床暖房の仕組みと特徴、さまざまな導入方法について詳しく解説していきます。
ヒートポンプ式床暖房の仕組み
ヒートポンプ式床暖房は、空気中の熱を効率的に利用して床下の温水パイプを温めるシステムです。その仕組みを理解するためには、次の3つの要素を押さえる必要があります。
ヒートポンプの働き
ヒートポンプは、空気中の熱を圧縮・濃縮して温水を作り出す装置です。エアコンと同じように冷媒を圧縮・膨張させることで熱を移動させ、低温の熱源から高温の熱を取り出すことができます。この仕組みを利用することで、少ない電力で温水を効率的に生成できるのです。
一般的なヒートポンプの熱源には、外気や地中熱、井戸水などが使われています。中でも外気を熱源とするエアソースヒートポンプが、コストパフォーマンスに優れているため、住宅用の床暖房によく採用されています。
温水循環方式
ヒートポンプで温められた温水は、床下に敷設された配管を循環することで、床面全体を均一に暖めます。この温水循環方式には、主に2つのタイプがあります。
- 分離型: 温水パネルと仕上げ材(フローリングなど)が分離されているタイプ。温水パネルの上にフローリングを重ねて施工します。
- 一体型: 温水パネルと仕上げ材が一体化されているタイプ。温水パネル自体が床面になるので、施工が簡単です。
一体型は施工が容易な反面、将来的なリフォームが難しくなる点に注意が必要です。分離型なら、フローリングの張り替えなどが可能です。
ゾーン制御による効率的な運転
ヒートポンプ式床暖房は、複数のゾーンに分けて温度調節ができるのが特徴です。必要な部屋だけを暖めることで、無駄な消費電力を抑えられます。さらに、省エネ運転モードを使えば、温水の循環量を抑えて効率的に運転できます。
ゾーン分けの際は、間取りや使用頻度、日当たりなどを考慮して設計することが重要です。適切なゾーニングを行うことで、ランニングコストの大幅な削減につながります。
ヒートポンプ式床暖房の特徴とメリット
ヒートポンプ式床暖房には、次のようなメリットがあります。
高い暖房効率
ヒートポンプは、空気中の熱を利用して温水を作るため、従来の燃焼式暖房に比べて高効率です。実際、ヒートポンプの暖房効率は200~400%と言われており、同じ熱量を得るのに必要な電力を大幅に削減できます。
この高い暖房効率は、ランニングコストの低減にもつながります。灯油やガスを燃料とする暖房器具と比べても、電気代が半分以下に抑えられる可能性があります。
快適な暖房環境
床暖房は、足元から徐々に体を温めていくため、空調と比べてムラのない快適な暖房環境を実現できます。また、空気を直接加熱するわけではないため、ホコリの舞い上がりもありません。アレルギー対策としても有効です。
さらに、温風が出ないので結露の心配がなく、カビの発生リスクも低くなります。特に高気密な住宅では、このメリットが大きいでしょう。
静かな運転音
ヒートポンプ式床暖房は、ファンやモーターを使用しているものの、その運転音は比較的静かです。防音設計がされているため、リビングなどの居住空間に設置しても気になりません。
一方で、温水を循環させるために使われるポンプ音が気になる場合もあります。その際は、ポンプを別室に設置するなどの対策を講じる必要があります。
導入方法と費用
ヒートポンプ式床暖房を導入する際は、次の2つの方法があります。
エコキュートと組み合わせる方法
すでにエコキュートを導入している住宅であれば、床暖房機能を追加するだけで温水式床暖房を実現できます。
費用はエコキュートのタイプにもよりますが、おおよそ100万円前後が相場です。一方、ヒートポンプ式床暖房を新規で導入する場合は、50万円程度が一般的な費用となります。
ヒートポンプ式床暖房専用機を導入する方法
これから床暖房を導入する住宅では、ヒートポンプ式床暖房専用機の設置が必要になります。専用機にはヒートポンプが内蔵されているので、温水を効率的に作り出すことができます。
専用機の価格は、メーカーや製品にもよりますが、概ね50万円から60万円程度が相場となっています。ただし、配管工事などの施工費用が別途必要になる点には注意が必要です。
オール電化住宅への最適な選択肢
ヒートポンプ式床暖房は、オール電化住宅にとくに適した暖房システムです。その理由を次の3点で説明します。
電気だけで高効率な暖房が可能
ヒートポンプは、電気を使って空気から熱を取り出す仕組みです。従って、ガスや石油などの化石燃料を一切使わずに、高効率な暖房が実現できます。オール電化にぴったりのシステムと言えるでしょう。
さらに、ヒートポンプ式床暖房は燃焼を伴わないため、一酸化炭素の発生リスクもありません。安全性の高い暖房方式なのです。
再生可能エネルギーとの相性が良い
近年、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用が進んでいます。ヒートポンプ式床暖房は、こうした自然エネルギーとの親和性が高いのが特徴です。
例えば、太陽光発電で賄えるだけの電力量があれば、ヒートポンプ式床暖房を無料で運転することができます。また、蓄電池と組み合わせれば、夜間でも電力を自給自足できます。
非常時でも暖房できる
オール電化住宅では、災害時の電力確保が課題になることがあります。しかし、ヒートポンプ式床暖房なら、少ない電力で効率的に暖房できるため、非常用電源があれば運転が可能です。
一方、ガスなどの燃料を使う暖房システムでは、電力がなくなると運転できなくなってしまいます。この点、ヒートポンプ式床暖房の方が有事に強いと言えるでしょう。
注意点と適切な使い方
ヒートポンプ式床暖房は素晴らしい機能を備えていますが、適切に使わないと十分な効果が得られない可能性があります。ここでは、床暖房を上手に活用するためのポイントをご紹介します。
床の上に家具や物を置かない
床暖房の上に家具や物を置いてしまうと、そこだけ温まらず、暖房効率が落ちてしまいます。床の上には何も置かないよう心がける必要があります。
カーペットなどを敷く場合は、床暖房専用のものを選びましょう。通常のカーペットは保温性が高すぎて、床面の熱を逃してしまう恐れがあります。
窓際は別途暖房が必要
床暖房は部屋全体を均一に暖めることはできますが、窓際の温度はやや低くなる傾向にあります。寒い日は、別途ストーブなどの補助暖房が必要になるかもしれません。
もし大きな窓があれば、ヒートポンプ式床暖房のゾーン分けで、窓際を別ゾーンにするのがおすすめです。温度設定を高めに調整することで、窓際の冷えを緩和できます。
つけっぱなしが経済的
ヒートポンプ式床暖房は、つけっぱなしにしておく方が経済的です。一旦温まった床を再び暖める必要がなくなるため、エネルギーロスが少なくて済むからです。
ただし、無人時など長時間不在の場合は、節約モードに切り替えるなどの配慮が必要です。温度設定を下げたり、ゾーンの一部を停止したりすることで、さらに省エネ化が図れます。
まとめ
この記事では、ヒートポンプ式床暖房の仕組みや特徴、導入方法などについて詳しく解説してきました。高効率で経済的、環境にも優しいヒートポンプ式床暖房は、オール電化住宅や再生可能エネルギーとの親和性が高く、災害時にも強い暖房システムです。
一方で、床の上に家具を置かないなど、使い方には注意が必要です。また、導入費用が高額になる点も留意しなければなりません。でも、ランニングコストが安く、メンテナンスも簡単なことを考えると、長期的には十分にコストパフォーマンスに優れているでしょう。
快適な暖房環境を実現したい方は、ヤマトハウステックにご相談ください!適切に設計・運用すれば、充実した暖かい冬を過ごせることでしょう。